ならばお好きにするがいい。
保健室には、既に数名の生徒がいた。やはり体育祭に、怪我をする生徒はつきもののようだ。
「熱中症ですね」
「やっぱり」
結城を見た養護教諭は、手際良く治療にあたってくれた。
「まったくもう……あんなに無理しないように言ったのに。こんなになるまで頑張るなんて、莉華ちゃんらしいというか……」
「?それはどういう……」
「ここ最近莉華ちゃんは保健室の常連さんでしたから。練習の頑張りすぎで怪我が絶えなくて、ほとんど毎日来てたんですよ」
「そうだったんですか……すみません、うちの結城が迷惑かけてしまって」
「いいえ、迷惑だなんてとんでもない」
結城を寝かせるベッドの準備をしながら、俺の顔を見て、彼女はふ、と微笑んだ。
「莉華ちゃん、ここに来る度小田切先生の話ばかりしていたんですよ」
「え……」
「『絶対優勝して小田切先生を喜ばせてあげるんだ』って。そんなふうに頑張ってる姿見せられたら、応援したくなっちゃうじゃないですか」
「……」
用意したベッドに、慣れた手つきで結城を寝かせると、彼女は優しく結城の頭を撫でた。
「小田切先生愛されてるなって思ってたんですけど、莉華ちゃんも愛されてるわね」
そう言いながら俺をみて、彼女はクスッといたずらに笑う。
「側にいてあげて下さい。私、他の生徒の治療もしなきゃいけないので」 ベッドの横に畳んであったパイプ椅子を広げた彼女は、口元に笑みを浮かべながらベッドの回りのカーテンを閉めた。