ならばお好きにするがいい。
……と、言いつつ。
こんな風に手厚くこいつを看病してる俺は一体何なんだ……。
「可愛くなかったら、普通ここまでしないよねー」 ニヤニヤとうぜー笑みを浮かべる樫芝の姿が思い浮かんで、頭の中で樫芝を思いきりぶん殴った。
「うぜェぞバカ芝……」
しかし頭の中でいくら樫芝に八つ当たりしても、胸に込み上げるもやもやした重苦しいものは広がっていくばかりで。
「ちげーよ……これは、その、アレ、アレだろ、担任としてのアレ……。担任が生徒を大切にするのは義務みてぇなもんで……つまり、その、だから、アレだ。アレだから、そういうんじゃねーから」
自分でも誰に言ってるのか何を言ってるのかよく分からない。
「……恋愛感情とか、そういうのは、無ェよ」
結城の横顔にぽつりと呟いてみたが、当然返事は帰ってこない。
「……ハァ」
コーヒーを一口飲んでから、俺は長く息を吐いた。
腹の中でぐるぐる渦巻くこの複雑な感情も、溜め息と一緒に吐き出せちまえりゃいいのに。