愛詩-アイウタ-
「ひか………」


 キーンコーンカーンコーン…



 瑠架の言葉は鐘に重なり、消えていく。



「なぁに??」


「いや…なんでもない…」


「あっ!」



 さっきまでと違うことに気付く。



「今の、本鈴だぁ~!!」



「まじかよ!?」



「まじで」



 光璃達の学校は規則が厳しいことで有名でもあった。


 1学期はチャイム着席強化中らしい。


 すでにふたりとも、チャイム着席をせずにトイレなどにたまっていたため、職員室へ呼ばれ済み。


 次はないぞ、と脅された。チャイム着席の数は教師の教師による価値となっている。



 迷惑極まりない。



「多分まっつんまだ来てない!」



 まっつんとは松田先生のことで、ふんわりした肉の腹がチャームポイントだ。


 髪は灰色で、50代。定年間近のベテラン。



「オレんとこも平気!多分だけど。じゃあな!!」



「うん!」



 全部で8組ある中で、4組はほぼ真ん中。


 瑠架は左へ、光璃は右へ。



 ほぼ同時に走り出す。



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