蔓薔薇屋
解決屋



アリガナという国には、とある噂があった。




『住所は知られていないが、比較的狭い通りにある、小さめの家。


目印は門に伝う見事な蔦薔薇。右側にある銅のプレートには「蔦薔薇屋」とある。


その館についたらまずは扉を普通に二回ノックする。一呼吸おいた次に、軽く扉を三回叩く。
そして最後に、『蔦薔薇を買いにきました』と言うこと。
そうすると、東洋人の少女が出迎える。


それが、依頼を請け負うという了承の証らしい。


逆に、男の老人が出てきたら、それは依頼をしないという証だ。』













アリガナ連合国、グラッブ商業区画。
洒落た個人経営の雑貨屋や洋服店が立ち並ぶ一角にひとりの、ボウラーハットにラフな三つ揃い、フロッグコート姿の若者が途方にくれたように立ち尽くしていた。手にはメモがひとつ。
それを眺めてすかして、ひとつばかり大きなため息をついた。


「…嘘っぱちじゃないだろうか…?」


アルバート・フォスターはその、噂の『解決屋』をもう、丸5日も探していた。


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