初恋は前途多難! ~朗らか社会人とメイド女子高生 【1:出会い編】
 ちゃんとお化粧もいつも以上にしようかなって思ったんだけど。

 本当は、受診後は真っ直ぐ家に帰って部屋の中で午後から静養しなさいっていっつも言われているから、あたしを担当してくれているお医者様に怒られるのを避けるため、お化粧もいつも通りファンデーションを塗るだけの控えめなものにしておいた。

 シンさんとの待ち合わせの時間も余裕を持たせていたし、ちょっとよくないと思うけれど、お店で待っている間にさっとお化粧をしようと思う。

 時間がかけられないのがちょっと残念なんだけど。

 でも、途中でこまめにこっそりお化粧直しをすれば大丈夫――かな?

 それに、会うって言っても長時間じゃないだろうし――

 ……って思うと、どうしてだかほんの少しだけ寂しい気持ちが出てくるなんて、どうしてだろう……?

「……さて、と――」

 時計を見て時刻を確認。

「あ、もう行かなきゃっ」

 ちょっと急がないと予定の電車には厳しいかも。

 うーん、余裕を持って起きたのに……ちょっと服のチェックに時間をかけすぎちゃったかな。

「行ってきまーす」

 今となっては誰も返事してくれなくなったその言葉を中に向かって呟いてから、あたしは部屋を出た。
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