初恋は前途多難！ ～朗らか社会人とメイド女子高生 【１：出会い編】

「えっと、その――シンさんって、どんなお仕事をしているんですか……？」

　シンさんの気遣いのおかげもあって、あたしの心は随分と変わったように思う。

　お店、っていう束縛が全て解け、気がついたらあたしはシンさんにそんなことを聞いていた。

「ぼくの仕事？　――ただのしがないサラリーマンだよ」

「でも、こんな高級そうな車に乗っているんですから……」

　普通のサラリーマンがこんなに高級そうな車には乗れないと思う。

「うーん、人と比べれば少し忙しい身分かな？　その分ほんの少しだけ給料も高いかもしれないけれど、大したことはないよ。それに、忙しくてその給料の使い道がないんだ。だから、ごくたまにこんな贅沢をしてみたくなるんだよ」

　どんな仕事、って詳しくは分からなかったけれど、シンさんがやっぱりごく普通のサラリーマンじゃないってことは分かった。

　きっと謙遜しているんだと思うけれど――本当はすごく忙しい人で、大変な仕事をしているのかなってなんとなく察する。

「いつも一緒に来られる真治さんも、同じ仕事なんですか？」

「真治？　あぁ――うん、少し違うけどね、同僚……かな？」

　真治さんとは学生時代からの付き合いで、今は同じ会社で部署は違うけれどずっと同じ仕事をしている仲だから、って事も教えてくれた。

　仲がいいからって事で、２人でお店に来てくれているらしい。

　でも、お店に誘うのはいつもシンさんからだから、付き合ってくれている真治さんのコーヒー代はいつもシンさん持ちだってことも教えてくれた。