初恋は前途多難! ~朗らか社会人とメイド女子高生 【1:出会い編】
「――どう? 高い所は大丈夫?」

 オーダーを終えてボーイさんが立ち去ると、隣のシンさんが少し体を寄せ、小さな声で聞いてくれる。

「はい。――建物の中ですから、大丈夫です」

「そっか――よかった」

 小さく笑って頷き、シンさんはゆっくりと両手をテーブルの上に乗せ、軽く手を組む。

「……」

 車にいたときよりも、距離が近い。

 思わず、ときん――と、胸が鳴る。

「あの辺りが蓮花駅の周辺だよ。こうしてみると、距離があるね」

 す、とシンさんがこっちに体を大きく寄せ、手を伸ばしてやや右の奥のほうの景色を指差す。

「ぁ――……」

 そのとき、ふわり――と、シンさんから不思議な香りが漂ってきた。

 さり気ない甘さと、爽やかな香り――いつものシンさんのコロンと……

 もうひとつ、別の甘い香りが混じっている。

 この香り……覚えがあるんだけど、思い出せない……

 なんだったっけ――?
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