月光レプリカ -不完全な、ふたつの-
 今まで通り、いつも通りの日々に段々と戻っていけば良い。心が振り回されて苦しい。
 光のこともあったけど、あたしは中尾先輩のことがあって。時間は放っておいても流れていくから。気持ちばかりが焦るけど、空回りになりそうで。

「あー、なんか食って帰りたいわー!」

 突然、冬海が叫んだ。「お腹空いてんの?」あたしが問いかけると、ウンウンと頷く。

「マックでも行こうか」

「またマックかよ」

「いいじゃん!」

 というかマックしか寄るところが無い。そんなあたしたちの町。

 放課後にこうやって一緒に居て、全校生徒が帰ったんじゃなかってくらいまでダラダラと過ごす。他に行くところが無いのかってくらい。静まり返った校舎と校庭の片隅で、先生に見つからないようにあたし達は過ごす。

 あたしは冬海を呼び捨てで呼ぶようになった。でも、冬海はまだあたしを「センパイ」って呼ぶ。なんとかならないもんか、それ。

 冬海は傘を持ってこなかったので、あたしが持ってきた1本しか無い傘に2人で入る。

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