月光レプリカ -不完全な、ふたつの-
 春休みに入ると、気が抜けたようになってしまった。これって予想してたけど……。

 ため息ばかり出る。

 勉強にも身が入らず、そんな状態で机に向かっていても仕方がない。

 梓と美由樹を誘って気分転換をしようと思った。カラオケ? 買い物?

「うちにおいでよ。あたしケーキ買ってくる!」

 そうメールを返してきたのは美由樹だ。3年生になったらクラス替えできっと離れちゃうし、2年生打ち上げをしようって。

 良いかも。絶対楽しい。

「んじゃあたし、しょっぱいの買っていくね」

 甘いケーキがあるなら、しょっぱいお菓子も必要。梓がしょっぱいもの担当。じゃああたしは……。

「あたし飲み物!」

 炭酸とお茶とオレンジジュースとかで良いかなぁ。あ、ミルクティーとココアも買っていこう。

 一晩中、語り明かすんだ。


「晃、これお母さんから差し入れ。みんなで食べなさい」

 準備をして、家を出るとき、お母さんから紙袋を受け取った。「なにこれ?」と紙袋を開けると。

「あ、クッキー」

 甘い香りが鼻を触る。

「昨日、焼いといたの。お母さんも今日、お友達とお茶するから」

 ウフフ、と笑ったお母さん。


< 341 / 394 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop