見えない糸
タバコを消すと直次は、施設から借りた写真を取り出した。
この写真を見ると、紗織は1年生ではない。
もう少し大きい…多分、4年生位だろうか?
直次と知り合う前の写真かもしれない。
この時には既に、表情が曇っている。
「ホントに何があったんだろう…」
溜め息混じりで、写真を見つめていた。
そして、その写真の裏に書いてあった名前。
治療していくうちに、紗織の口から【高谷】という名前が出てくるんだろうか?
直次は、またタバコに火を点けて、窓側に椅子を移動して座った。
暗い外へ細く白い“糸”のような煙。
行き先もないまま、風に流されていく糸。
『まるで、今の俺と紗織みたいだな…』
そう思いながら、糸を見つめていた。