ダブルベッド




 8月1日、深夜。

 ダブルベッドの上で、桃香は充(みつる)の腕にしがみつく。

「やだ、怖い」

「大丈夫だって。動かないから」

「うそ、だってほらっ、きゃっ!」

 あまりにも愛らしい反応に、充はもっと意地悪をしたいという衝動に駆られる。

「そんなに大きな声を出すから、動きたくなるんじゃない?」

「黙ってる。黙ってるから早く」

「早く、何?」

 彼女が何をどうして欲しいのかはわかっている。

 けれど、桃香に離れて欲しくない。

 いっそのこと、ずっとこのままでいられたらいいのに。

 いや、それは桃香にとっては拷問か。

 それでも意地悪をしたくなるのは、男のサガなのかもしれない。

「ねえ、どうして欲しいの?」



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