ダブルベッド

 電車が到着しそれに乗り込むと、帰宅ラッシュの電車は人でいっぱいだった。

 いつもはこんなにも混まないのだが、どうやら事故か何かの影響で特別に混んでいるようだ。

 充は小柄な桃香が潰れないように、自分の体で隙間を作ってやった。

 満員電車にかこつけて体を密着させるという手もあるな。

 なんて迷っていると、桃香の愛らしい顔がこちらを向いた。

 やましい考えを見透かされたようで、カバンを持つ手にグッと力が入る。

 すると桃香のぽってりとした唇が充に語りかけた。

「木下くん」

 隙間があるといっても、近い。

「遊園地がいい」

「え?」

「だからね、デート」

「あ、ああ。土曜日の、ね」

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