ダブルベッド

 突然の申し出に、充は驚いてしまった。

 デートは自分が無理矢理取り付けたものであったし、沢田との関係の疑いもあったしで、中止になるとばかり考えていた。

「忘れてたの? どこいきたいか考えといてって、言ってたの木下くんじゃない」

 頬を膨らませる桃香。

 充は慌ててフォローをする。

「まさか。ちゃんと覚えてるよ」

「後のことは、おいおい決めていこうね」

「うん」

 デートができる。

 つまり、自分に脈がないわけではない。

 そう捉えた充は、沢田のことや佐和子の忠告なんてどうでも良くなった。

 デート、デート。

 頭の中はそればかり。

 もしかしたら、沢田にもらったチケットが役に立ったりして。

 という期待なんかも次々と浮かぶ。

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