ダブルベッド

 美人席といえば、男性社員は誰しも一目置く存在だ。

 もちろん、恋愛対象として。

 前任の女性には(別れてしまったそうだが)彼氏がいたし、多少の気はあったが縁がなかった。

 桃香に関しては、まだ可能性がある。

 と充は思っている。

 彼氏がいれば、大嫌いなクモ退治も自分に頼まずに済んだはずだ。

 それに、たとえ社内にライバルがいようと、家が近所だという点で大きく有利。

 そして桃香の一人住まいにお邪魔したことがあるというスペシャルな経歴。

 充は、自分は今、桃香が社内で最も親しくしている男性社員であると確信している。

 夜中に呼び出された?

 もっと呼んでくれてかまわない。

 エアコンの温度はちょっと物足りないけれど、もっとここにいたい。

 有頂天の充は、高まる気持ちを抑えながら桃香の部屋を見渡してみた。

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