ダブルベッド

「眠いの?」

 桃香の問いかけに、軽い気持ちで

「ちょっとね」

 と答える。

 その瞬間、桃香の顔つきが変わった。

「ダメ!」

 ダメと言われても。

 眠くなるのは生理現象である。

「大丈夫。この時間なら道も空いてるし、2時間もあれば……」

「ダメだよ! どこかで、ちゃんと寝なきゃ」

 充は朝の桃香を思い起こした。

 異常なまでの安全運転思考。

 酒のせいで若干顔が赤いけれど、表情は「怖いの」と言ったときと同じだった。

「どこかって、寝る場所なんてないよ」

「じゃあ、どこかに泊まろう?」

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