ダブルベッド
彼女が黙ってしまうのは、その覚悟がないことを代弁している。
彼にとっては少なからずショックだが、気持ちを察してくれないことに対する怒りの方が少しだけ勝っていた。
窓の外に煙を吐いて、桃香に目を移す。
潤んだ目がトロンとしていた。
桃香も充と同じ時間、いや、もっと早い時間に起床しているのだ。
眠いのだろう。
充はまだ長いタバコの火を消して、シートベルトを締めた。
「それじゃあ、ご希望通りに」
意を決して、車を走らせる。
数秒後、助手席のほうからもシートベルトを締める音が聞こえた。
「もう知らねぇ」
充は心の中でそう思って、しかし法定速度は守って走った。