キスフレンド【完】
「それはそれ、これはこれだ!!」
「はいはい。帰る時、連絡するね?」
慌てふためくお父さんにヒラヒラと手を振ってリビングを出る。
すると、バタバタという音を立ててお父さんがあたしを追いかけてきた。
「まさか……彼氏がいるんじゃ!?」
「いたら、どうする?」
「ほ、本当にいるのかい?!」
「それは、秘密」
そう答えると、お父さんは呆然としたまま口をポカーンっと開けた。
友達はみんな、親を『ウザい』っていう。
『何時に帰ってくるの?』とか、『誰と遊んだの?』とか聞かれるって。
プライバシーなんて何にもないってよく言ってる。
あたしが大人になって、子供を産んだら……
今のお父さんの気持ち……理解できるようになるのかな?
「ちゃんと帰ってくるから安心して?じゃあ、いってきます!!」
「……――ちょっ、理子ちゃん!!」
いつのまにかまた呼び方が『理子ちゃん』に戻っていて。
それでも、いいか。
あたしは帰って来た時とは違う軽やかな足取りで玄関を飛び出した。