キスフレンド【完】

ナナに適当な言い訳をして屋上に向かう。


紫苑はまだ、先輩の話をうんうんって興味ある風を装って聞いているに違いない。


ナナには『彼を好きになったって意味ないよ』なんて言ったのに。


それなのに、どうしてあたしは彼のいいなりになって屋上にやってきたんだろう。



どうせ、こうやって呼び出すのも紫苑の気まぐれ。


先輩とのおしゃべりに飽きたからかも。


だけどあたしは今、飛び上がりたいほど嬉しくて。


紫苑と目があったこと。


口パクでメッセージを送ってくれたこと。


自分だけが特別なような気がして。


優しく微笑んでくれたこと。


胸がキュンと高鳴って顔がほころぶ。


望みがないって分かっているのに、こんなにも紫苑のことを好きになって。


だけど、熱いこの気持ちを止められない。






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