キスフレンド【完】
「あの男の子には何の罪もないんだけど……可哀想に……」
あたしはおじさんにペコリと頭を下げると、アパートを後にした。
とてもまともに立っていられそうになかったから。
フラフラとした足取りでなんとか近くの公園までやってきた。
ベンチに座ると、さっきのおじさんの言葉が何度も頭の中で繰り返された。
家賃が払えずに……出ていった……。
借金もあって……取り立ての人も来てた。
それをおじさんの口から聞いて初めて知るなんて。
紫苑は一度だってそんなこと口に出したことはなかったから。
自分が辛いときだって、いつも柔らかい笑みを浮かべてあたしを見守っていてくれた。