キスフレンド【完】

「そうだ……。これ……」


おじさんに渡された白い紙袋を思い出して、急いで中を見る。


中にはピンクの手袋と、一枚の手紙が入っていた。




*****


姫へ



ずっと姫の手を握っててあげたかったけど、


ちょっと無理っぽい。


だから、手袋を買ったよ。


女だらけの店に一人で入るのは抵抗があったけど


姫の為になら頑張れたよ。



俺と姫とシロの居場所、守れなくてごめん。


でも、あのアパートはずっと俺達の居場所だから。


誰か他の人の手に渡っても、俺達が過ごしたあの時間は


絶対に消えたりしない。



姫が忘れても、俺が全部覚えてるよ。


さよならは寂しくなるから言わない。



そのかわりに、ありがとう。


またいつか


会えたらいいな。



その時はきっと、姫じゃなくて『理子』って


呼べそうな気がするから。



また会う日まで。



紫苑


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