キスフレンド【完】

「理子、こっち向いて?」


「やっ……!!」


「本当に嫌なの?」


反応を楽しむように、紫苑はあたしをイジめる。


こういう時の紫苑は、いつも『ドS』だ。


「ここ、気持ちいい?」


恥ずかしがるあたしにわざとそんなことを聞いてきたりする。


余裕のないあたしとは対照的に余裕そうな表情で。


「んっ……――。紫苑……、もうあたし……――」


漏れそうになる声を我慢しながら呟くようにそう言うと、紫苑はあたしの体をギュッと抱きしめた。


「まだ、ダメ」


今日の紫苑はずいぶん意地悪だ。


もしかしたら、昨日のあの出来事を引きずっているのかも。


だけど、紫苑が心配するようなことは何もないんだよ……?



「……――紫苑、大好きだよ?」


あたしが好きなのは、紫苑だけだよ?


これまでも、この先もずっと……。


だから……――。


紫苑の首に腕を回すと、紫苑は『俺の方がもっと大好きだから』とあたしの耳元で甘く囁いた。


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