キスフレンド【完】
「ねぇ、理子。紫苑君に海斗のことで何か聞いてない？」


「聞いてないなぁ」


「……あ～あ。理子達みたいに一緒に住んでれば、こんな心配しなくてすむのに」


一緒に住んでれば……か。


って……、そういえば……――。


ナナの言葉に、ふとあることを思い出した。


「昨日……いつ帰ってきたんだろう」


「えっ？」


「昨日ね、０時まで待ってたんだけどいつの間にか寝ちゃって。起きたら紫苑が隣にいたんだけどいつ帰ってきたのか分からないんだ……」


「紫苑君が朝帰りしてるってこと？」


「……多分。最近、そういうことが多いんだよね……」


「心当たりはないの？」


「う～ん……。特にないなぁ」


「そっかぁ。海斗も紫苑君も何してるんだろうね」


「……だね」


少し前まで特に気にとめていなかったのに、気になりだすとそればかり考えてしまう。


紫苑が朝帰りするようになったのはいつからだっけ……？


この時に心の中に芽生えた不安の種は、どんどん膨らんでいった。


< 268 / 363 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop