キスフレンド【完】
「……っ」
ああ、あたし、もう抜け出せないところまで来てるかも。
紫苑の意地悪な笑みにすら、こんなにも胸を高鳴らせているなんて。
抑えようと必死だった感情が、胸の中で膨らんでいく。
「見惚れたって言ったら、どうする?」
あたしがそう聞くと、紫苑はクスッと笑った。
「俺は、姫に見惚れたことあるよ?」
「……え?」
「じゃ、おやすみ」
紫苑は意味深な言葉を発した後、どんなに話しかけても答えようとはしなかった。
紫苑の茶色い髪が太陽の光に反射してキラッと光る。
あたしは風になびいて顔を隠してしまった前髪をそっと手でどかした。