キスフレンド【完】
「ねぇ、紫苑……――」


「今は聞かないで。あとでちゃんと話すから」


「えっ……?」


「あの人とは家庭教師のバイトで出会ったんじゃないんだ。だけど、理子が心配するようなことは何にもないから」


「じゃあ、どこで出会ったの?それだけでも教えて?」


「ごめん。今は言いたくない」


紫苑はそういうとあたしの頭を撫でた後、いつものような柔らかい笑みを浮かべた。



「今日の夕飯はハンバーグがいいな。久しぶりに一緒に作ろうか」


サラッと話題を変えた紫苑。


『これ以上聞くな』


紫苑の瞳がそう言っているようで。


だけど、隠されるとますます知りたくなる。


美波さんという女の人が紫苑とどういう関係なのかとか、紫苑がなんのバイトをしているのかとか。


家庭教師のバイトの他にもうひとつバイトをしているってこと?


最近、夜遅く帰ってくるのもあの人が原因なの?


あたしが知りたいことを何一つ教えてくれない紫苑。


もしかして、やましいことでもあるの……――?
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