キスフレンド【完】
「紫苑君ってば、彼女に嘘ついているの?」


「別に嘘ついてるわけじゃ……――」


「だって、あたし達の出会いって家庭教師のバイトなんかじゃないでしょ?何かやましいことでもあるの?」


「紫苑……どういうことなの?」


あたしが慌ててそう尋ねると美波さんは口の端をクイッと上に持ち上げて笑ったあと、わざとらしく口を押えた。


「あらっ。あたしったら余計なこと言っちゃったわね。じゃあ、また」


美波さんはそう言って紫苑に手を振ると、あたしには目もくれずに歩き出した。


嵐が去ったような静けさがあたしたちを包み込む。



美波さんとはどういう関係なの?


前からの知り合い?


それともあたしと出会う前に遊んだ人……?


ううん、違う。


美波さんは紫苑とあたしが付き合っているのを知っていた。


それに、紫苑が嘘をついているって……――。


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