キスフレンド【完】
朝方にバイトの残業を終えてこのソファーに座ってコーヒーを飲んだところまでは覚えている。


だけど、そのあとの記憶が一切ない。


きっと疲れていつの間にか眠ってしまったんだろう。


固いソファーで同じ体勢で寝ていたからか、体中のあちこちが痛む。


でも、そんなことに構っている暇はない。



昨日の夜、寝不足でフラフラだったところを理子に見られた。


理子の心配を押し切って家を出てきたし、今頃心配しているはずだ。


俺は大きく背伸びをすると、勢いよく立ち上がった。


一刻も早く、理子の待つ家に帰る為に。



「ねぇ、しお……――」


「……――起こしてくれてありがとうございます。じゃあ俺、帰りますね。お疲れ様です」


引きとめられたらめんどくさいことになる。


早口でそう言って事務所を出ようとしたとき、美波さんが俺の行く手を塞いだ。




「ちょっと待ってよ!!」


美波さんは不機嫌そうに唇を尖らせる。
< 290 / 363 >

この作品をシェア

pagetop