狼彼女のお気に入り
「…それから、ね」
「ん?」
っ──…
会長と目があって、あたしは息をつまらせた。
「……ううん。何でもない。」
そう言って会長から手を離した。
「…戻れば?」
「あ…うん。そうだな。」
何か言いたそうにあたしを見る会長。
「…なに?」
「お前…いや、篠田は戻らない、のか?」
何であたしのことなんか気にするんだろう…
扉の前で振り向いてそう聞いた会長。
そんな会長の行動に、胸が鳴る。
“あたしらしくない…”
そうは思っても、少し熱をもった頬を誤魔化すことは出来なかった。
「あたしは…いいや。」
「そう、か。」
しばらくして扉の閉まる音がした。
ふう…とあたしはため息をつく。
ホント、無意識であんなことをしてるんだとしたら。
会長って、相当、ズルいよ。