狼彼女のお気に入り
憐said〜
あたしは小さい頃から、欲する前に全部持っていた。
手に入れられないものなんてなかった。
男だって、好きなだけ寄ってきたし、あたしが言ったことは何でも叶った。
でも…
「…篠田?」
少し低い声にそう呼ばれる度に、胸が疼く気がした。
あたしの嫌味にも動じなくて
何にも染まることのない、その真っ直ぐな瞳の貴方が
会長が
初めて、心から欲しいと思った。
「会長が、欲しいよ。」
そう言って自分から重ねた唇は、思ったよりも甘く、優しかった。
立ち上がろうとした会長の腕を思わず掴んでしまって、あたしは正直、焦っていた。
だって…