狼彼女のお気に入り
「クスッ。」
突然、篠田がおかしそうに笑った。
その声につられて俺は戸惑いがちに顔を上げる。
「あぁ、そうだ。会長、一位おめでとう。」
「…見てたのか?」
「もちろん。今日は会長だけを見に来たんだから。」
「俺、だけ…?」
「そ。会長だけ。」
「そ…そうか」
なんだか居たたまれない気分になって、近くの壁に寄りかかった。
篠田も隣に腰をおろす。
「会長さ、途中で速度落としたでしょ?皆は気付いてなかったみたいだけど。」
「別に…」
「なんで?」
「それは…!」
言ってしまってから、しまったと気付いた。
案の定、篠田は口元を上げてこちらを見ている。
「それは…何?」
ぐいっ──
あっという間に篠田が俺の前に覆いかぶさる。
「そんなに緊張して…どうしたの?」
「っ…」
「ねぇ、会長───」