狼彼女のお気に入り
「…ふぅ」
無事、午後の競技が始まった。
そして今やっているこの競技が終われば、残すは全校ダンスのみとなる。
ま、それが一番不安だと言えばそうなんだが…
「会長、いよいよですね。」
「あぁ。」
少し緊張しているような柴原の声が後ろから聞こえて頷く。
それもそうだろう。
この為に頑張ってきたんだ。
チラッと柴原の顔を伺っても、俺と同じように不安の色が見えた。
「…会長?」
「ん?」
ふと、柴原が俺を呼んだ。
「会長はその…だ、ダンスの相手は……決めましたよ、ね…?」
「いや、特には決めてないが。」
前にクラスの女に誘われたのは、恵介が全て断ってくれたらしいし。
というか…
さっき、アイツを誘おうと思ったんだが。
いなかったし、な。
俺が決めてないと口にすると、柴原の顔がぱあっと明るくなった。