狼彼女のお気に入り
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「はぁ…」
俺はつくづく馬鹿だと思う。
『……一つ、伝言をお願いできますか?
“明日の放課後、生徒会室で待ってるから。”
それだけ伝えてください。』
あの後、俺は篠田のお兄さんにそれだけ伝えて電話を切った。
あんなこと、今の篠田には言っても無駄だろうに。
とは言え、あそこで無理矢理代わってもらうわけにもいかなかったんだから、しょうがないんだが…
来ない……よな、アイツ。
俺は夕方のどんより曇った空に深く息を吐いた。
「……ただいま。」
「おかえりー…って、翔か。どうした?今日はやけに早いじゃないか。」
「あぁ…ちょっとな。」
「…今日は肉じゃがだって、愛奈が言ってたぞ。」
「………あ…買い物……」
行かなきゃ…な
そうは思うのだけど、なかなか足が進まない。
玄関でどうしても立ち往生してしまう。
そんな俺を父さんが不思議そうに見ている。