狼彼女のお気に入り
あぁ…だめだ
柴原にも父さんにも心配させて
俺は………
何も出来てない。
みんなを困らせたいわけじゃないのに
結果的に俺がみんなを困らせてる。
篠田も………
俺が困らせてる…んだよな。
「……今日は父さんが行ってくるよ。」
「え…?」
「いや〜たまたま鍋が壊れたところだったんだ。翔、留守番頼んだぞ。」
「……ごめん」
父さんは満面の笑みで俺の頭を軽く撫でて、家を出た。
きっと、俺に気を使ったんだろうな。
父さんは嘘をつくのが下手だから。
…鍋なんて壊してないくせに。
父さんはいつも、俺が頼りやすいように手を差し伸べてくれる。
俺から言うなんてことが出来ないのを、父さんはわかってるから。
「…ありがとう父さん」
少しだけ
気が楽になったかもしれない。