俺様彼氏と空手彼女2
翌朝。
寒空の下、純白の舞うような雪花の中いつものように、君はいた。
「おはよう。」
「おはよう…。」
私は、普段と特に変わらない葵を眺めた。
無地の真っ黒いダウンを着ただけで、他は何も防寒具の類いを身につけない葵。
そんなんで、よく寒くないよね。
「…寒くないの?」
「さみーよ?」
「じゃあ何でダウンだけ?」
「んー、さあね。」
葵は、ふっと柔らかく笑い、いつものように私に左手を差し出した。
「さみーだろ。手、貸せよ」
「…ん。」
私も、こうなることを知ってるから手袋はしてない。
いや、期待…してるのかな…。
まるで走ったあとみたいに、ドキドキする心臓に気づかないフリをして葵の手に自分の手を重ねようとしたときだった。
「…っわ!」
突然ぐいっと何かに身体を引っ張られ、バランスを崩した。
二、三歩後ずさると、トンと背中に触れるもの。
それが、誰が人の身体にぶつかったのだと気づくのに、そう時間はかからなかった。