陰陽(教)師
嵩史には、2人のやりとりの意味がわからなかった。

「さっきからなに言ってるんだよお前ら」

「俺ももう少し早く気づけば良かったんだがな」

「気にしないで。要くんは悪くないよ」

「あのー、僕の話、聞いてます?」

嵩史は完全に蚊帳の外だった。

「あたしから鈴子に話してみる。とりあえず家まで行ってみよ」

「わかった」

そう言うと明菜と大吾は再び歩き出した。

「オレにはさっぱりわからん」

嵩史は首をひねるしかなかった。



―――――――――


「全員で来てもいいって言ってたわ」

明菜は携帯を閉じた。

電話の相手は鈴子だ。

3人はいま、杉沢市内のとあるアパートの前にいる。

鈴子はこのアパートで暮らしているのだ。

たった1人で。

「そうか、魔女だもんなぁ…」

嵩史はアパートを見ながらつぶやいた。

「ジブリ映画は本当だったんだな」

「なに感心してるのよ。行くわよ」

明菜は呆れ顔でさっさと歩き出した。

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