ぱすてる
映画が終わると

いつのまにか外は真っ暗になっていた。



見上げると駅前のビルの光が

キラキラと輝いている。


あたしはその光に見とれていると

左手がぎゅうっと暖かくなるのに気付いた。





あたしはびっくりした。

ただただびっくりした。

ほんの少し、目が潤んだ。

潤んだ目で左を見ると

うつむいたまま手を握る孝治くんがいた。






彼の手はあたしよりも震えていた。





涙が出そう。

あたしはまた遠く上を見つめた。

光り輝くビルのもっと上を。





「あのさ‥。」







今度こそ、

あたしは彼のその言葉を待っていた。







夜空に一つの流れ星が流れた。
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