狐に嫁入り!?
「さすが善狐の神。私がいたことはお気づきでしたか……」
ヤマジは力なく笑った。
ウタクは何も言わず、無表情のまま。
「……えっと……どういうこと?」
「実雨様、実は私、お二人の戦いをずっとあそこで見守っておりました」
頭が追い付いていかない私に、ヤマジが木の陰を指差しながら答えてくれる。
「坊ちゃまが実雨様を奪いに行くと申すので……心配で心配で」
ヤマジは胸を抑えながら苦しそうに顔をしかめた。
ナライが突っ走りすぎないか、本当に心配だったんだろうな。
……ヤマジらしい。
「しかし心配は無用のようでしたね。犬猿の仲である狐とは言え、今回ばかりは感謝致します」
ヤマジは目を閉じて静かに礼をした。
「感謝なら見えるもので示せ。そうだな、酒がいい。狸の方にはうまい酒があると聞いたぞ」
「う、ウタク!……でもなんでウタクに感謝を?」
私は要求を繰り出すウタクを抑えながらヤマジに聞いた。