指先の魔法
「ティナ!ティナ!!」
ステラは叫ぶ
珊瑚礁を抜けた先には
毎日通いつめていた洞窟があったのに
それは突然なくなっていた
「ティナっ!!…なんで…?!」
ステラはその場に崩れ、目には真珠を光らせる
「嘘つき…「いつでも来て下さい」って言ったじゃないっ…!」
ステラの周りにはたくさんの真珠
視線を下に向けるといつかティナにかけてもらったおまじないが爪に塗られていた
青いベースカラーに黄金のステラ
それは確か怖くないようにとティナがしてくれたもの
「違う…ティナは知っていたのね」
もうステラはこの洞窟に来ることはないと
「私はもう、人間と共に生きる術を知ってるわ」
人魚が歌う
指先にはステラのおまじない
深い深い森の中
暗い暗い海の底
広い広い空の上
金木犀の香につられて
指先の幸せをお手伝い
探せば消えて
望めば鍵が
ホグミルズ4丁目
神出鬼没なおまじない屋には
ひとりの魔法使いが住んでいる
<ステラのおまじない-End->