指先の魔法
ぱしゃ…
チェリザの街の隣にあるエメラルドポート
そこにいる人々は待っていた
ひとりの人魚の帰りを
恐る恐るステラが地上に顔を出すと人々は叫ぶ
「…ステラ!」
「…みんな!なんで…」
「ステラ!!無事でよかった!!」
「君は関係ないのに巻き込んで悪かった…でも、君のおかげで皆助かった」
「ステラにはとても感謝してるの」
そして、次々に謝罪とお礼を述べる
ステラは聞く
「…私のこと…売らない?」
「もちろんだ!!もう、あんなこと絶対にしない」
「また、友達?」
「初めからずっと友達のままだろ?」
その言葉を聞いてステラは笑った
心の底からの笑顔で
人間不信のカケラが砕けた音が聞こえた
「ありがとう…」
そう言うとステラは大きく息を吸い込んだ
――海の底ではステラの仲間がいた
「あら?この歌声はステラね」
「まったく。また地上に行ってるわ」
「珍しいわよ。あの子が歌う時は本当に嬉しい時だけだもの」
「本当に人間が好きなのね」
地上にも海底にも美しい歌声が響き渡った