指先の魔法




―――そこは医薬品の匂いに包まれたベッドの上だった


「カズマっ!カズマっ!!」

「ぅ…、ハルカ…?」

「カズマっ…!!」



ハルカと呼ばれた女性は涙を流しながらカズマに抱き着く


「…ちゃんと生き返った?」


カズマはハルカを抱き寄せながら自分の手を見てみると、そこには爪に塗られたハートが10個



「…ふっ…ぐず…カズマ…?」

「あ、あぁ…なんでもない」



カズマは我にかえると、ハルカをめいいっぱい抱きしめた




――カズマとハルカは婚約中だった


式もあと3日に迫った日、カズマは不運な衝突事故に巻き込まれ命を落としていた


カズマは即死だった





カズマの望みはただひとつ



もともと病弱なハルカ



すでにもう、いつまで生きられるかわからない



せめて、式だけでも

せめて、自分がしてあげれること

せめて、ハルカの望みを叶えたい



こんなところで、先に逝くわけには行かなかった





「ハルカ…ごめんな」



カズマは誰にも聞こえないぐらいの小さな声で呟いた




< 22 / 27 >

この作品をシェア

pagetop