世界の果てに - 百年の光 -

売れ、って…そう言った…?


「な、何言ってんのエル!」


「うるせぇな。俺なら売られたって、隙を見て逃げ出せんだよ」


ハン!とこれまた偉そうに鼻を鳴らすエルに、あたしは訳も分からず眉をひそめた。


「…そんなことしたって、君に得はないよね?」


エルの顔を珍しげにまじまじと見ながら、イーズくんが言う。


対するエルは、少し黙ってから、再び口を開いた。


「条件は、二つだ。俺たちの荷物を全部返すことと、俺を売った報酬の七割は、俺自身が貰うこと」


「………!」


イーズくんたちにとって、これは良い話なのか。


結局手元に来るのは、エルを売った値段の三割だけになる。


それでもイーズくんとケルンさんは、お互いの顔を見合わせて頷いた。


「じゃあ、訊くけど。君を売ったとして、どのくらいの報酬になるのかな?」


その質問に、エルは口の端を上げてニヤリと笑った。


「お前らが想像する値段を、遥かに超える自信はあるぜ」


本当に、その自信たっぷりの態度はどこからくるんだろう。


…それでもあたしは、嬉しかった。


だってエルの提案は、イーズくんとケルンさんを、助けると言っているように思えたから。


< 236 / 616 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop