さとみみさと先輩
軽快な足取りでコンビニの自動ドアを通り抜ける。

「いらっしゃいませ~、おはようございま~す」
はい、おはよう。

心の中でレジのおばあさんにご挨拶をして、おにぎりコーナーへと進む。

あぁ、良かった。今日はついている!いつもは無い、新潟県産コシヒカリのいくら入りおにぎりがまだ1つ残っているではないか!

迷わずにそのおにぎりに手を伸ばす。


が、そこにヤツはあらわれた。

僕の右側から細く白い手が伸びてきたのだ。
しかも伸びていく場所は僕の手と同じ場所だ。

手と手がぶつかり合い力づくで手を押し返す。

「これどうしても食べたいって友達に言われてるんです!」
どっかで聞いたことのある声だ。

「いや、僕も毎日このコンビニに通ってやっと今日GETできるところなんですよ。」

「私、女なんですけど」

「僕は、男ですがなにか。」

「やっぱ譲るもんですよね。なんとかファーストって言ったかな。」

「でも、友達のなんでしょ?」
そうだ、友達には無かったゴメンって言えばで済むだろう。

「いや、私のなんです。ください、おねがいします。うぅ」

声質が急に変って驚いて僕は隣の手の持ち主を見た。

やっぱり。
「お前…。」

そうなんです。
隣でおにぎり戦争を繰り広げた相手は僕の頭に石を…いや紙を投げ返してきた女子だった。

「え?くれるの?」

「いや、違う、そうじゃない」

「わ~ありがとう。」
そういって僕の話を聞かず、その女子はおにぎりを持っていき189円を払って出て行った。

この感覚はデジャヴだ。
「F**K!」

僕はなぜかイギリスっぽくなってしまった。
でも本当にそのとき思った。

糞って。

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