秘密
SIDE.門田悠平
悠平は冷静にそう言い終えたものの、本心ではとても嬉しがっていた。
初めて先生がヤキモチを妬いた。
タマのおかげだ。
……どうしてあのとき、俺はタマと付き合うことにしたのだろう。
いや、深い意味はない。
あのときはただ、今野珠子を監視していなければと思ったんだ。
「門田く」
好美が悠平に寄り添った。
そんな好美を悠平は抱き締める。
こんなに小さいんだ。
弱いんだ、脆いんだ。
先生は俺のもの。
たとえ貴女の、その体が知らない奴のものになろうとも。
その名字が変わろうとも。
悠平は好美を抱き締めた。
「先生っ……。好き、だ……」
好美は悠平の胸に顔を押しつけた。
やわらかな髪を何度も撫で付けて、悠平は何度も言った。
「好きだよ、先生」
好美の肩が震えたのが、悠平にも解った。
「嫌なことがあるなら、辛いことがあるなら言ってよ。俺は何でもするから」
「っ……」
「言えよっ……」
「今野さんと、あまり仲良くしないで。見ていることすら辛いの……」
「……」
妬いて欲しかった。
それだけだ。
俺は貴女が好きだ。
俺は貴女が好きだ。
今野珠子は好きでもなんでもない。
オモチャと同等だ。