秘密
SIDE.雨宮好美
その時、好美には逃げるように走り去る珠子の姿が見えていた。
ああ、あの子は……。そう解っていながら悠平に抱き付き、顔を埋めた。
悠平はそれに気付くこともなく喜んで好美を抱き締めた。
「門田君、ありがとう。そろそろ戻るわ」
「そう、大丈夫なの?」
「うん、安心したの」
好美があまりにも優しく笑うので、悠平も思わずふわりと笑った。
「良かった」
それではまたと、好美はその場を去った。
ふうと幸せな溜め息をつくと、悠平もまたその場から去った。