秘密
 

SIDE.今野珠子
 



 
もう解っていた。
本当の自分の気持ちを。
 

珠子は何故悠平のことがあんなにも気になったのか、アッシュの髪ばかりを目で追っていたのか、それがどうやら無意識であったことまで。
 

今気付いた。
 

嘘だ。
気付いていた。
気付かないでいた方が幸せなのだと、無意識に頭が警告を出した。
だから今、ここで珠子は涙する。
 

 
「どうしよう」
 

 
溜め息混じりに珠子は鼻を啜った。
悠平は気にはしないだろうが、悠平に合わせる顔がないと自己嫌悪に陥る。
何故あの場面を見てしまったのだろう。
他にいくらでもあるだろうに、何故あの二人が抱き合う場面を。
 

珠子は赤くなった目を隠そうと、誰もいない非常階段に戻り腰を掛けた。
いつの間にか珠子は眠ってしまっていた。
 

 
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