秘密
SIDE.門田悠平
珠子はどうやら非常階段で眠っていたらしい、と悠平は思った。
かかとの部分を踏んだままの悠平の上履きが、ぺたぺたと廊下のコンクリートを擦る。
すとん、と悠平は珠子の隣りへ座る。
「タマもなかなか不真面目だな」
「そんなことない。たまたまだもん」
「何だそれ、シャレか?」
「はあ?何言ってるの、意味不明だよ」
珠子のつんけんとした話し方に悠平は少しむっとした。
珠子はこちらを向こうとしない。
「タマがたまたまって言ったからだろう」
「笑えないなあ」
「わ、悪かったなっ」
「またどもってる……」
「うるさいっ」
いつの間にか、タマと一緒にいることを楽しいと感じている俺がいた。
それはなんだか、まずい事だと思った。
タマは監視をしていなければならないだけであって、俺からすればこの関係は遊び半分なんだ。
タマと必要以上に仲睦まじく見えるようなことは、先生が傷付くから。
タマが俺を嫌いになれば良い。
そうすればタマの性格から言うと多分、俺と先生の関係はバラしたりしないから関わるなと言うはずなんだ。