秘密
SIDE.今野珠子
「タマ」
珠子は拗ねていた。
悠平と好美の、仲睦まじい様子を見てしまったせいだ。
見なければ良かった。
二人の関係を知らなければ良かった。
「タマ、こっち向けよ」
「何……」
だんだんと業を煮やすように話し方がきつくなってゆく悠平に、珠子は素直に振り向いた。
悠平はじっと珠子を見つめている。
「何、どうしたの……?」
「少しは恋人らしいこと、しようぜ」
「は?」
珠子が言い終える前に、悠平は珠子を無理に抱き寄せて唇を啄んだ。
何これ。
どうしてあたし、門田君と……。
珠子は動けなくなった。
瞬間的に驚き目を見開いて、悠平のされるがままとなる。
「っ……」
ちゅ、と音を立てて唇を吸われる。
珠子の体はぴくりと反応した。
悠平が離れる様子はなく、珠子は身動きが取れない。
「ちょっと待っ、て」
息が苦しくなり、手に力を入れて悠平の体を押しやる。
珠子はあまりの恥ずかしさに悠平の顔を見ることができずにいた。