秘密
SIDE.門田悠平
珠子が手で、眼で、全身で、意味が解らないという気持ちを発している。
悠平は珠子にキスをした。
「どうしてっ……」
「どうしてって、仮にも恋人だし」
「そんな」
珠子の顔が紅潮しているのが、悠平にも見て取れる。
タマが俺を好いているはずがない。
嫌われてはいないのかもしれないが、好かれてはいないはずだ。
早く俺を嫌いになれば良いのに。
口元を手で覆う珠子を、悠平はもう一度抱き寄せる。
珠子の体が強張る。
「離し、て」
「いいだろ、別に」
「先生にも同じこと、してるくせにっ」
「!」
ああ何だ。
さっきは見ていたのか。
それなら尚更だ。
早く俺を嫌いになれば良いんだ。
「誰とでもキスができるのね」
悠平の腕の中で珠子がくぐもった声でそう言った。
悠平は淡々とした声で答えた。
「ああ。これで解っただろう」
「……さすがだね」
珠子は半分笑い混じりに言った。