秘密
 

SIDE.門田悠平
 



 
解らない。
出会うのが遅過ぎた俺達のこのやりきれない気持ちは、誰にも解らない。
 

この苦しみを解ってくれ、とは思わないのはどうしてだろうか。
先生と俺とだけの秘密であるような気がして、その間に誰も入ってこさせないようにするためだろうか。
 

結局は、先生と俺との間には誰も入れないという思い込みの壁を作りたいだけなのだろうか。
どれにしろ、たまには解らない。
 

 
「悠平荒れてるな」
 

「は?荒れてない」
 

 
教室に戻ってきた悠平にへらへらと笑いながら近付いてきたのは、悠平の友達のハジメだった。
いつも何かと悠平の怒りを刺激し、悠平を苛つかせる材料の一つである。
しかし、その反面内情を聞いてきはしない良き悪友でもある。
 

 
「別に何でもない」
 

「そうか、女か」
 

「うるせえ」
 

 
< 35 / 114 >

この作品をシェア

pagetop