秘密
 

SIDE.今野珠子
 



 
どうしよう、どうすればいいだろう。
 

珠子はただそれだけを考えていた。
 

 
「ただいま」
 

 
両親はまだ仕事から帰っていないので返事は返ってこないが、珠子は部屋に向かってそう言った。
寂しいと思う反面、一人で考えることができる、良い空間だと思った。
 

 
「ただいまーたまー」
 

 
珍しいことにこんなに早く帰ってきたのは珠子の兄、薫だった。
 

 
「あ、カオリちゃんおかえり」
 

「馬鹿ー、カオルだって解ってるだろう」
 

 
語尾を伸ばすのはこの男の癖である。
きっと楽天家な祖母からの遺伝なのだろうと珠子は思っている。
 

薫は珠子の四つ年が上で、大学に通いながらバンドをしている。
自費で作成したCDもそこそこ売れているらしい。
 

 
「今日は早かったのね、かおちゃん」
 

「うんまあね。愛するたまと一緒にご飯を食べたいなと思って」
 

 
ああ、この兄のこういうところが好きだと思うのは自分がブラザーコンプレックスだからだろうか、と珠子は思った。
 

 
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