秘密
SIDE.門田悠平
悠平はいつものように灰色に染めた髪の毛をワックスで立たせ、制服に腕を通す。それから鞄を引っ掴むと、最近気に入っている飴玉を口内に放り込んで自宅を出た。
昨夜、悠平は酷く長い時間をかけて珠子のことを考えていた。
できることならば珠子に会いたくない、そう思いながらも悠平は好美に会う為に通学しているのだ。
「……」
一人なので無言で定期を確認してからバスに乗り込み、悠平は携帯電話を開いた。携帯電話のディスプレイには通知画面が表示されている。
好美からメールが届いている。
「門田君、おはよう。今日の放課後も待っているわね」といった内容だ。
そんな好美からのメールを読み、悠平は口元が綻ぶのを手で覆い隠すようにした。口角が自然と上がってしまうのだ。
悠平は「おはよう、先生。了解」という素っ気無い返事をし、良い気分で携帯電話をポケットにしまった。
珠子に会いたくない、悠平のそんな想いはこの時、どうでもよいものになっていた。
好美からメールが届くだけで、悠平の胸はこれ程にも高鳴るのだ。